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幻月

Phantom Moon
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桜鬼
お嬢様がそれであると、はっきりと判明したのは、彼女の話からして発病より十も日がたってからのことであった。

幼少のときより聡明で美しかったお嬢様は、誰が疑うこともなく、桜鬼と呼ばれるほどに美しく育ち、なんの障害もなく、貴族の子女がそうするように十四にもなれば許婚が定められ、一生を籠の中で生きることが決まっていた、そこに何の衒いもあるはずがなかったのである。
また蝶よ花よと育てられた割に、彼女は驕る様に生きたことはなく、限りなく純粋で高尚であったので、そのように俗のように褒められれば、顔をゆがめて一瞥しては新しくついたメイドを解雇させることが頻繁であった。
彼女の元からの気質でそうなったのか、全ての行為は私が行うような生活を続けていたための結果がこれである。
まさかまさか、足元がまるで抜けたかのように錯覚する。

旦那様はがくりとひざをつき、彼女の二人の兄のうちの一人の幸一様がそれを支えるように駆け寄った。奥様は真っ青になって今にも卒倒しそうである。
ひざを突いたかの英雄の前には、まるで皇帝のように彼女が静かに椅子に腰掛けていたため、その小さな少女にひれ伏しているかのようにも錯覚する、それほど彼女は堂々とした少女だった。
もう一人の兄である聡流様が、本当か、と小さく、それに彼女はうなづいた。
気がついたのは先刻、最近は本を所望することがなく、暇さえあれば窓に張り付いて外をうかがっていたのだから、この生活や、この生活の未来に嫌気をさして逃げ出したいとでも考えているのかと、その考えが否定されたのだった。
あの行動はなんだったのか、その小さな行動全てに、そうであると分かれば説明はつく。

私は、盲になりました。

なぜ本を読まなくなった、なぜガラスに張り付くようにして外を伺っていた。
読みたくても読めぬのだ、ガラスが暖かくなる陽の光を肌で感じるためにほかないではないか。

彼女の目は少しも動かず、私は立ってもいられない。
その底なしの井戸の瞳に、光がともることはもうないのだ。
それなのに、それなのに彼女はまるで本当の鬼のように、完璧なまでに美しい。



それが私の愛した花鬼の姿である。
| 話 −緋色の月・外伝− | 16:46 | comments(0) | - |