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幻月

Phantom Moon
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白薔薇
どうして、私はあのひとが、燃えるような恋愛をした時代に、そう人を求め慈しみ愛する年代に沿うようにして生まれなかったのか。

白薔薇

わたしは、たしかにあの人のことを愛していました。
家業であった彫りの仕事に付いていったのが始まりです。
たしか私は10かそこらのただの娘で、あのひとはなかなかの地位に居た40ほどの成熟した男性でした。
それでも、確かにそれは恋であり、確かにそれは愛でした。
目が合う、手が触れる、声が鼓膜を震わせる、そのひとのすこしの動作で私がどれほど心が騒いだでしょう、弾んだでしょう、どうしようもなく恥ずかしくて、逃げ出したことすらありました、これを恋とよばず、愛とよばず、なにに名前をつけられるでしょう、私はあのひとに恋をしていました。
あのひとの大切な方は、亡くなってもう十何年、当然会った事も、見たこともございませんでしたが、話を聞く限り、この屋敷に居る限り、限りなく美しい人だということは分かりました。
みんながみんな、彼女のことを愛していました、彼女の愛したものを愛し、微笑み、見守ってきたというのにの不慮の事故だったと聞きます。
わたしは、あのひとがまだ、彼女のことを忘れられないのを知っていました、あのひとはそういうひとなのです、とても一途でとても一途で、そしてとても優しいひとなのです、だから愛したのです、だから愛せたのです、わたしはあのひとが抱える全ての闇、全ての黒く塗りつぶされた陰の部分、全てが腹立たしく愛おしかったのです。
あのひとはわたしの愛に気づいていました、それはどんなしぐさにも、にじみ出ていたので私の胸は何度突き刺さました。あのひとのその愛に、その愛情に、私はつけこみました、そばにおいてくださいと、どんな形でもどんなことをされても、どんな扱いをうけようとも構わないので、どうかそばにおいてください、貴方のそばにいたいのですと悲願しました、拒絶しないでくださいと、浅ましい女のように、醜く泣いてすがったのです。
あのひとは笑いました、悲しそうに笑いました、だれがあなたに不当な扱いをさせられる、あなたは私の大切な人だとまで言って下さいました。あのひとは私が隣に居ることを、当然のようにあつかってくれました。
ただ、私に触るようなことはしませんでした、まったく非生産的な関係だったのです。
わたしは、そばにいられるという幸福と、そうすることで自分を陥れるとを秤にかけてそうしたので、何をいうことができるでしょうか。わたしは打ちのめされ、ばらばらに砕かれ、その破片で血を流す心臓をただただ眺めていることしか出来ませんでした。
それでいいとおもっていました、それでいいと、それ以外になにを望めると、わたしはきっと地獄に落ちるでしょう、優しくいとしいあのひとが、こぶしを振り上げているのをただ見ることしか出来ないのです、あのひとが私をそばにおいてくださるということに、伴う痛み、苦痛、苦悩、全て私のものだと思うだけで満たされていたのです、私は地獄に落ちるでしょう、あのひとは優しい、あのひとは優しい。
そうして5年も過ぎたある日の夜に、たしかその日は風の強い嵐の日でしたが、そんな夜にあのひとは私を呼び出しました。
部屋には、銀のトレーと針、黒の墨と鏡が置かれていました、灯りという灯りは無く、あのひとがもった三椏の燭台だけが唯一の光源でした。
トレーに乗った紙を開けば、黒一色で描かれた、白薔薇が目に入り私は唐突に理解しました、目の前の椅子に座って、こちらを向いているあのひとの瞳にはいつものように愁いと悲しみと同情と、愛が、愛が確かに存在していました。
服を一枚一枚と落とし、裸になった私は迷うことなく針を腰に落としました。
腰への刺青が一番痛いということを知っていました、知っていてそうしました、この痛みはあのひとの愛、そう思えば痛みすらも愛せました。
最後の一針が肌から離れ、崩れ落ちる私をあのひとは抱きとめてくださいました、強く優しい腕でした、届かないとただ眺めていただけの腕でした、私はどうしても泣きたくなって、それでも背中に腕は回せませんでした、これが私の愛の形、これ以上どうして望めるというのでしょう、私はこの屋敷を去らなくてはいけません。
私は地獄に落ちるでしょう、間違いなく落ちるでしょう、優しい人を苦しめすぎました、あのひとの手は、私を砕くために幾度と無く振り上げられもうぼろぼろなのです、血まみれなのです、あのひとこそ、あのひとこそ、心臓から血が流れている。
それでいてどうしてそばに居られるというのでしょうか、わたしたちはこういう行為をしてはいけなかった、なにものこしてはいけなかった、それでも私はこの誘惑を退けることが出来なかった、あのひとが始めて手を差し伸べてくれた。

私はこの屋敷を離れないといけない、あのひとは私を愛してはいけない
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| 話 −花−* | 11:38 | comments(0) | - |
鬼百合
あれを見さらせ鬼百合じゃ


鬼百合


祖母の家の縁側に、白い鬼百合が咲いている。
毎年夏になるといつのまにかにょきにょきと生えて、庭一面にその反っくり返った花を見せる、盆の名物のような花だった。
小さいことから私はその時期になると心が騒ぐ、それというのもそうして私が庭を眺めていると、一人の涼しげな青年がひょっこりと顔を出すからだった。
今日もいつ出るかいつ出るかと、縁側で待ち侘びていれば、呆れたような顔をして、椿の木の間からその青年は顔を出した。筑紫のような出方だったので、私は少し噴出してしまう。

あぁ、又お前か

えぇ、また私ですよ

くすくすと笑えば、青年の顔はゆっくりと笑いの形を取る。
いつも来るとお前が縁側に座っている、とそのひとがいうので、どだい私も暇なのですよ。と言い返してやれば、知っているとこともなげに打ち返された。

青年は薄の穂のような髪の色をしている。
鳩色の着物をずらんと面倒だといわんばかりに着ているが、汗をかいたことは見たことがない。
触ればひんやりと冷たく、まるで私は清流につかったかのように思うのだ。
熱い日差しの中でそのひとの隣は、都会の機械で冷やされた空気よりもよっぽど私を涼ませる。

迎え火もなしにお帰りですか?と聞けば、お前俺をなんだと思っているのだ、と怪訝そうに眉をひそめて、ぐりぐりと男は髪の毛を乱した。
このひとはなんだといっているが、人間でないのは明らかでしょうといえば、お前のなかでは盆帰りの幽霊か、人間かしか区分がないのか、かわいそうな頭だな、そこらの烏のほうがよっぽど頭が良いぞ、とあぁ本当にこのひとは口が悪い。

あれを見さらせ鬼百合じゃ

この家の主である祖母が、この庭に執拗に生える鬼百合を指して、そういった。
その横顔が、何か悲しむような、怒っているような、それでいていつくしむようにゆれていたのを私は知っている。
祖母は盆になるとめったに庭に出ない、そうしてつむぎだされる答えに私は納得し、それでいて少しばかり寂しかった。
祖母はいないぞ、今は出ている。そういってやるとそうか、ならお前で仕方ないと、そんなことをいいながら帰らないでいてくれるこいつが悪いと私は思う。

この青年は祖母に懸想している。

私と祖母はそれほど顔が似ているわけではなかったが、青年がその外側の皮をはいだ中身を確認するかのような目でみて、その目を細めて、私が違うと言ったことを否定する、お前はあいつにそっくりだよと。
そんなことをいうから、よっぽど幽霊説に拍車がかかる。

一度あなたは何者なのですかと、こぼしたことが会った、俺はあれだといって指を刺した先には、まだ若い薄が庭から申し訳なさそうにこちらに頭をたれていた。
確かに薄のような頭をしているものね、といえば、そうではない、昔吹曝しで死んだ小野小町の髑髏の目から生え出た薄だ、となぞ賭けのように男は言った。
祖母はまだそのようになっていないよ、というと、男は驚いたようだった、後はなにも言わなかった。

盆の前には何をしているの、と聴くと、特に何もしていない、時々こちらに顔をだして、また引くことの繰り返した、見たことはないが、海のようだと言われたことがあると、どこか誇らしげに男はいった。常識人が聞けばただの根無し草で、けっして誉たことではないが、やはりそれはどこかうらやましかった。

ねぇ、と声をかけると、うん?とその顔がこちらを向いた。
この家はそろそろつぶされると思う、祖母は内臓にわずらいがあったから、死期も近い、そのうち死ぬだろうと続けると、そうだろうなとまるで季節の話を返されるように返事を投げられた。祖母を連れて行くのかと聞いた、したら男は遠く遠くを見ながらさぁとこぼすように一言言った、考えあぐねているらしいかった。
祖母を連れて行かないなら、私を連れて行け、私を連れて行きたくないのなら、祖母を連れて行くといいというと、男は驚いたようにこちらを見た。長年こうして縁側に座っているが、驚かせたのは初めてであって、なんだか得したようだった。

あなたは祖母を愛しているでしょう、祖母もそのようなの、死んで枷がなくなれば、苦しくともつらくとも沿うのにそれほど害はない、連れて行くといいよ。

私はこの庭が好きだったの、この庭の鬼百合が咲くことが、咲くことを、ここでこうやって見ていることが好きだったの、この屋敷が、ここに住む祖母が好きだったの、いなくなるならいっぺんに消えてしまったほうがいい。
未練は嫌いだ、あなたのようになりたくないものと続けると、いうようになったな烏頭がと少しはほめられたようななんともいえないことをいわれた。

あなたは、あれでしょう。

そうして指差した先には鬼百合、隣に頭をたれた薄、男の指差したのは隣のそれで、わかっていて私は薄と言ったのだ。




あれを見さらせ鬼百合じゃ




男は笑ったようだった
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| 話 −花−* | 13:48 | comments(0) | - |
ダリア
私はマゾヒストでもサディストでもなかったが、とんだ気違いであることには間違いなく、そのひとの行動はいつも突拍子がなくて、口付けの後に拳が飛び、頭を撫でながら首を絞める、そんな気違いだったのだからやはり私達はお似合いだったのだろう。


ダリア


愛しているというくらいなら、どうか耳をつぶしてくれと、そのひとは悲しそうに寂しそうに、それでいながら鳥肌の立つほど美しく笑った。
会話という会話は、私の言葉で封を切り、その人が首を落として終わる。
そうして傷つく私を見て、その人は笑うから、この上ないほど美しく笑うから、私はわざとそういう言葉を口にした、そんな気狂いの中でなにも生まれるはずは無く、ただただ一緒に同じ空間で時を過ごしては空気を眺めて、時に加虐である自虐をその人を通して行って、又沈黙、リフレイン、終わらない自慰行為。
世間一般で考えれば、それは愛というには遠く遠く、ふさわしいという言葉には深い溝が確かにあった。

ではいったいなんだったのか、そういわれるとやはり、どうして、それは確かに愛だった。

ただ少し、ただ少し、脆すぎただけ。
思考を言葉にすることを嫌うそのひとは、思ったことは行動にあらわしていただけだ。
右手と左手に愛を持って、右手で暴力、左手で愛撫、世間との違いはそれらの行為を同時にしているだけ。

私はそれを甘受する。

このような獣を受け入れる自分に酔いながら、傷口を眺めて微笑みながら、耳をふさぐひとに強制と慈愛、そのひとのするように、そのひとのするように、たた違うのはそのひとが肉体的に行うことを精神的に行っているだけ。

そのひとの行為が異常だというのなら、私の存在も又異常、この関係を恐ろしいかと問われたら、この上なく、この上なく、それで居て極上の愛であり、私の、そのひとの、悪夢である。

ダリア、ダリア、ダリア、ダリア

いったい誰の血を啜ったのか
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| 話 −花−* | 15:49 | comments(0) | - |
彼岸花
その人は、彼岸花に似ている。


彼岸花


彼岸花の花は、それこそこの時期になると場所を選ばずにぶわっと固まって咲いている。
花びらというには細く薄いそれがひっくり返って、雄蕊雌蕊のうんぬんがつぃっと上をむいているのだから、しっかりと見ればそれはやはり美しい花だ。

子供の頃、その花の美しさに数本引き抜いて家に持ち帰ったことがある。
笑顔で親に渡したのだけれども、これは毒がある花なのだから、しっかりと手を洗いなさいといわれてその花は飾られること無くどこかに行ってしまった、きっと捨てられたのだと思う。
案の定もとから弱かった掌は真っ赤になり、その手で菓子を食べたからか腹を下して大変だった。

それから手を伸ばしたことは無い。

いつも歩くたびに眼を奪われる、それでももう大人になった今、触ろうとは思わないのだ。
酷い群生だと、じぃっと見て、終わる。
それはなんだか悲しいことだと思った。
単体で見れば繊細で、群生すると毒々しくなる、酷い光景だといいながらうっとりと見る。
あぁこれは確かに毒だ、確かに確かに、毒だ。


私はなんだかんだで、嫌いになれないのだ。


その人もその人も、繊細でいながらどこか毒を孕んでいた。
手を伸ばせば、用意に手折れるがそれは同時に優しく掌をただれさせる。
綺麗でいるくせに、確かに毒を持っていて、そんな顔でまた手を出さないのかと涼しくたっている、酷い人だと思う。
酷い人だと思う。
それでも私は、嫌いになれないのだ。

手痛い仕打ちを受けた、悲しかった、辛かった、それをどこかでぼぉっと見ていた、自分を。


あの人は彼岸花に似ている。
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| 話 −花−* | 11:51 | comments(0) | - |
合歓
合歓木が好きだとその人は言った。
僕はこれは合歓という木なのですかとその人に言うと、えぇそうですよ、かあいらしい花でございましょうとその人はゆったり、笑う。
笑うとその人は頬にえくぼが出来る、細い首のうなじ美人で、折れそうな身体をしているのに、そのえくぼだけは幸せそうである。


合歓木


その人は続に言う未亡人である。
未亡人という言葉はあまりいい意味ではないのだから、本人を前に言うものではありませんと、優しく言われたのが記憶に新しいが、それ以外表す言葉を知らないから、そういわれれば、だんなさんが、無くなった、奥様、という方が正しいのかもしれない。
庭に合歓木があった、すぐ伸びてしまうのといいながらぱちりぱちりと剪定した先から彼女は拾っていった、白い手、細い手首、あぁうなじまで細い。

合歓の花は、白から薄桃色へのグラデーションでもって、細い線がふわりと、毛玉のようにして咲いている、変わった形の花である。


私は、この木が好きです。


その人はそういってその枝に手を、その花に指を伸ばしたのは去年の秋、台風前の庭の整備で、人が多いそんな時だった。
ぽつりと、こぼすようにそういったのが印象的で、僕はこれは合歓という木なのですか、とそんなことを聞いた気がする。よく庭に出ているくせにこういうことは大変疎いのだ、だからかどうか分からないが、その人はえぇと笑って、かあいらしい花でございましょうと、恥ずかしいが自分が言った言葉は覚えていないくせに、彼女の言葉は良く覚えている、そう確かにそういっていた、かあいらしい花でございましょう。
その言葉のせいで、この花はかあいらしい花なのだ、と頭の中に記憶された、これはかあいらしい花。確かにかあいらしい毛玉のような花ですねというと、ころころと鈴が震えるようにわらわれた、毛玉と称したのがいけなかったらしい。

部屋に戻って、ふと興味がでたから辞書を一本持ってきて、未亡人という言葉を引いてみた。夫が死んでもなおおめおめと生き残っている妻という意味があると知った。
おめおめとは酷い言葉だと思った。
あの細い身体、白い腕の、あの人におめおめ、それは確かに頂けない、他に引くと寡婦という言葉が出てきた、あの人は寡婦、未亡人ではない。
しかしまたこれにも弊害があって、あの人とだんな様の間には子供がいないのだから、適用されるのかいまいち分からない。
あまり頭が良くないのに、そういうことは考えるだけムダである。早々に辞書を閉じる。

かあいらしい花でしょう、彼女はそういって笑ったのである。

その白い手、細い腕、またその首、身体、そして笑うときに出来る小さなえくぼ。
全てが薄幸そうだというのにそのえくぼだけは幸せそうである。
合歓木を見るその眼は、優しくすぼめられている。

あの人が好きだと思う、あの人が好きだ、そしてそれはとても幸せなことだ。
あの人は未亡人ではない、死んだだんな様のものではない、自由であればいい、可愛そうな美しい人、僕にとってたった一人の、女。
それだけで十分なのだ、頭を使って考えるまでも無い。
奥様、と口の中で言葉を作ると、それだけで幸せになれた。

奥様、奥様、僕がもし、剪定した合歓木を地に落とさずに手渡したら、貴方は受け取ってくださるでしょうか。

かあいらしい花だと、笑ってくださるでしょうか。
それとも意味を受け取ってくださるでしょうか。
そのどちらでも構わないのです、奥様、奥様、好きです、好きなのです、貴方が。

外では風が強く吹いている、納戸ががたがたとなっている。
合歓木は落ちてしまっただろうか、合歓の花は、あの人は。


僕は・・・
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| 話 −花−* | 11:50 | comments(0) | - |